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詐欺師は洗脳のプロ。特に組織団体になると、いかにしてターゲットを取り込むかを考えます。

これはカルト宗教団体やネズミ講、マルチ商法などで頻繁に見られる手口ですが、詐欺師は隠れ蓑を作るために、相手にマインドコントロールをかけるのです。

マインドコントロールと聞くと、多くの人は『暗い部屋に閉じ込められ、おどろおどろしい雰囲気の中で思想を植えつけられる』といったイメージを持っているかもしれません。

しかし、そうではないのです。

マインドコントロールは、なんでもない場所やタイミングでゆっくりと行われているのです。
単純なプロセスを繰り返し、それに慣れさせることが、マインドコントロールの根幹なのです。

では、ある女性がカルト宗教団体へ入信してしまった事例を見てみましょう。
この事例を参考に手口を知り詐欺被害にあわないための詐欺対策にお役立てください。



洗脳を解くには力技ではダメ

カルト宗教団体の洗脳

由美子(仮名)は、違法活動を行うカルト宗教団体に入信していました。

彼女が入信したのは18歳の女子大生のときです。その後出家をし、はや5年の月日が経っています。その間、彼女は一度も家に帰っていなかったのですが、親族の不幸をきっかけに、久し振りに家に戻ってきました。

家族としては由美子に違法な活動はしてほしくありません。そこで5年ぶりの再会を機に、父と母は由美子と話し合いをすることにしました。

しかし由美子はかなり教団の思想にハマっていて、家族だけの力では脱会の説得をすることは難しかった。そこで、詐欺の手法やカルト事情に詳しい専門の相談員に相談することにしました。

そして相談員にも参加してもらい話し合いがはじまりました。



父親は開口一番、眉間に皺を寄せながら、由美子に言いました。

「おまえのいる教団は、危険な組織なんだ!そのことを分かっているのか」

こういう言い方は逆効果なのです。

父親の言わんとしていることは分かります。しかしそれは『結論』でしかなく、思想にハマっている由美子に届くものではありません。ここは洗脳されている由美子のマインドコントロールを徐々に解きほぐしていかなければならないのです。

ゆっくり行われたマインドコントロールはまたゆっくりとしか解くことができないというのは鉄則です。



父親の言葉に由美子はこう答えます。

「私のいるところは全然危険ではない。中にいる人はとってもすばらしい人達で…」

それに対して父は、

「でも、違法な活動をしてるだろう!」

由美子は答える

「その活動をするには意味があるのよ。お父さんは教義を知らないから分からないだろうけど、私たちは世のため人のために活動をしているのよ」

彼女は必死の抗弁をする

「違法な活動をして人さまに迷惑をかけ、何が世のため人のためだ」

父親は吐き捨てるように言うが、由美子の耳には届きません。話は水掛け論になっていきました。



そこで相談員が二人の間に入りました。

「すみません、ちょっといいですか?」

相談員は彼女に入信の動機を聞きました。

「君はどうして、あの組織に入ってしまったのかな?」

すると彼女の目が輝く。よくぞ、いいことを聞いてくれたという顔になって、ハキハキと答えました。

「私は世界平和の実現を考え、少しでも世の中をよくしたいと思い入信をしました」

彼女の中には『これを伝えれば家族も分かってくれるはず』という思いがあるのでしょう。

母親が言いました。

「お、おまえが世界平和を考えて入信したなんて、信じられない。洗脳されているんだわ!」

母親は泣き崩れる。


[本当よ。人々の幸せを考え、世界平和を考えていたから入信した、それのどこが悪いの!]

由美子は一転、目を吊り上げながら怒り出しました。この種のマインドコントロールをされた人間は喜んだり、突然怒ったり、感情の起伏が激しいのが特徴です。

父親は言った。

「よく考えてみろ、お前が入信したのは、18歳の時だ。その頃、おまえは世界平和など考えていなかっただろう!」
「いや、考えていたわ」
「本さえも読まないおまえが世界平和など考えているわけがない!」

父親は激怒した。

身内同士の話は得てして感情が先走り、収拾がつかなくなるものです。



再び、相談員が話に割って入りました。

「ところで、君は入信する前に、何かボランティア活動をしていたのかな?」
「いいえ」
「そう、それじやあ、どんなことがきっかけて世界平和を考えるようになったのかな? 教えてくれませんか?」

彼女は自分が影響されたものを思い浮かべようとしたが、入信以前の記憶は何も出てこないようでした。

「誰かの生き方に影響を受けたとか?」
「う~ん」

由美子の声のトーンは小さくなっていきました。


「本当に入信前に、世界平和を考えていたのかな?」

入信時の記憶をさかのぼらせることで、彼女自身の手によって矛盾に気付かせる。これはマインドコントロールを解く上で大事な方法なのです。

彼女は次第に無口になり、自分自身を見つめていくようになりました。

家族の証言では、入信前の彼女は友達とカラオケをしたり、テレビの娯楽番組を好んで見るといった、ごく普通の女子学生でした。

ところが彼女は『当時から世界平和を考えていた』と主張する。

これはカルト宗教団体の人間たちによって、彼女の思考がうまく操作された結果なのです。



思想を植え込むマインドコントロールの手口

カルト宗教のマインドコントロール

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その後も彼女と何度も話し合いを重ね、その中で、彼女がどのようにして信者になっていったのか。そのいきさつが明らかになりました。

彼女がカルト宗教団体に入ったきっかけは大学の先輩だったのです。先輩にある勉強サークルを紹介されたのですが、このサークルの裏にはカルト宗教団体が存在していた。当然、そんなことを由美子は知りません。

大学の先輩は世間話をするフリをしながら、由美子に尋ねる。

「最近、テレビを見ていて何かためになるようなものあった?」

彼女はしばらく考えてから答えました。

「昨日、テレビのニュースでアフリカの飢餓の特集を見ました。世界では今この時も何も食べられずに死んで行く子供がたくさんいることを知って、とても悲しくなりました。自分にも何かできることがあればなぁ…って」
「そうなんだぁ、由美子さんはとてもボランティア精神があるのね。せっかくだから、ボランティア精神についての啓発ビデオでも見てみない?」

そのビデオは『世界平和実現のために私たちに何かできるか』という博愛主義を訴えかける内容で、この内容にはカルト教団の教えが随所に埋め込まれています。これを見ることで知らぬ間に教義を学ぶことになるのです。

マインドコントロールのはじまりです!

ビデオでは飢餓や戦争の映像を流しながら、教義内容に絡めて『私たちは今、何をすべきか』と訴えかけています。彼女はそれを昨日見たアフリカの飢餓特集の映像と重ね合わせ、あまりにも理不尽な世の中の現状に涙を流しました。

ビデオを見せた後、大学の先輩は面談をする。

「どうだった?」
「とても悲しい気持ちになりました。ビデオの中で言っていたように、世界平和を実現するために私は何かをしなければいけない気持ちが強くなりました」
「世界平和実現に向けて、私たちに何かできるのかを考えてみましよう!」

彼女は大きく頷きました。



こうして彼女のカルト宗教組織への道が聞かれたのでした。



悲しみの感情は人の心を大きく震わせます。たかぶった感情のもとでは、教義が心に入りやすい状態になります。

人間の頭は風船のようなもの。悲しみの感情で相手の思考の入口を緩めれば、カルト教団にしてみれば、いくらでもの思想を入れることができるのです。

ある程度、彼女の頭が思想で満たされると、その口を『世界平和実現』という言葉でつまんでとじる。



しかし、にわか思想は長続きしません。

2、3日後にはビデオの感動も薄れて、せっかく膨らませた風船もしぼんでしまいます。そこで再び思想を注入するために、新たなビデオで教義を学ばせ、『世界平和』の言葉でとじる!

これを何度も繰り返し、彼女の中に『世界平和実現』という揺るぎない入信動機を形作っていくのです。

最終的に彼女はこういう思想を抱いてしまうのでした。



『世界平和のためには飢餓を救うためのお金が必要』



これだけならまだいいのですが、『裕福な人々から騙し取ったお金を世界の飢餓を救うために使うことは善である』などという考えにまで洗脳されてしまう。

いつの間にか完全に洗脳は仕上がっているのです。

両親と相談員との話し合いによって自ら矛盾に気付いた由美子はこのカルト宗教組織を無事脱会することができ、今は平穏な生活を送っています。

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